日記の看板・真夏
当庵主人の絵日記です。
絵は、クリックすると大きくなります。
■山崎豊子狂い(2005.7.6)

 半年ぐらい前からだったでしょうか。パンダさんが「山崎豊子は面白い。読め読め読め」としきりに圧力をかけてきていたのですが、私にとって山崎豊子といえば「白い巨塔」。「万事機嫌よく」が信条の清く正しい落語ファンである私には、権力だとか、金だ女だドロドロデロデロな世界はノーサンキュー。「おいてや兄さん! アテは絶対読まへんで……!」と、長らくつっぱねていたある日のことです。茶臼山舞台の「+αの会」で、あやめさんの「手切れ丁稚」、染丸師の「菊江仏壇」とレアなネタがかかると言うので、遅刻しながら参じましたところ、「船場狂い」という件の山崎豊子氏の短編から作られた新作がクローズドで演じられていたのであります。

 おもしろかったなぁ……と、複雑な心境でいつものごとくスマンダで一杯していたら、パンダ兄さんと微笑みの三太郎兄さんが、楽しそうに山崎豊子談義をしているのにシンボたまらず、こっそりと「ぼんち」を購入して、一晩で543頁読破してしまったのです。

7/6  また違う落語会の後、スマンダで一杯やりながら「ぼんち」読破を告白した私に、パンダさんが目を光らせながらDVDを差し出した。大映の「ぼんち」の映画。主演は市川雷蔵。うぅぅぅぅ面白い、美しい。


 またまた違う落語会の後、スマンダで一杯やりながら「ぼんち」DVDがおもしろかった旨をシブシブ告白した私に、ニヤニヤと笑うパンダ兄と三太郎兄は、私を除け者にして楽しそうに「女系家族」談義を始めた。ムムムムおもしろそうではないか。すぐさま、近所の本屋にダッシュし「女系家族」上下巻をゲット! 朝の3時30分までかかって、読破。醜い人間関係に勧善懲悪的カタルシス! おもしれぇ! でもあぁ、また寝不足でシワとクマがぁ。
 綿密な取材で定評のある山崎豊子氏ですから、船場の商家の調度や季節の衣装、柱や畳の目にまでアリアリと想像できる情景描写はすばらしい。読んでしまった以上、今後の落語ライフに影響をおよぼさずにはおられません。実力のない息子ならサックリ廃嫡して、娘に手腕のある養子を迎えて暖簾を保つとは、船場噺のマクラでもよく聞くけれど、落語に描かれている船場は、今まで私には男社会だったのです。芝居狂いの若旦那に気難しい親旦那、大きく遣うが奥内はしぶちんというイメージだったのに、その世界が覆されてしまった。今後は「親子茶屋」や「たちきれ」にも、描かれないご寮人さん、お家はんの影を意識せざるにはおれませんがな。

 それから山崎作品は、番頭の生態が鮮やかに描き出されているのもおもしろいですね。「足上がり」や「百年目」の番頭の衣裳代、遊興代の捻出方法の真実は、これを読めば明らかに(?!)
 折しも7/7から「女系家族」のテレビドラマが放映されるらしい。残念ながら、舞台は東京に移されているらしいけれど。でも、これも見なければなるまいて。うむうむ。
 そして、寝不足続きでヘロヘロな私に、パンダさんがささやく「『しぶちん』も、『のれん』もおもしろいデ」

 あんぎゃー、明日も本屋へダッシュなのか、私。

■あなたならどう斬る(2005.6.20)

 最近「高津の富」を、文太さん千朝さん小春團治さんと、立続けに聞いたんですが、いつもスルーしていた言葉にヒョイっとつかまってしまったのです。とっても些細なことなんですけど、私近ごろ「お半分様」が気になるのです。

 もう宿屋さんったらぁ、おもしろいお方じゃなぁ。フフフ……

 って、聞き流すとこっていうのは承知の助なんです。でも、縦半分にスライスされて、こぼれ落ちる内臓を手で押さえながら、笑顔で宿屋の前に立つお半分様を想像してしまった時から、「お半分様」は私の中で「ぬらりひょん」や「のっぺらぼう」の係累に堕してしまったのであります。なるほど、妖怪とはかくのごとく作り上げられてきたのか。スマンダで例のごとく一杯やりながら、私の民俗学的考察を語ってきかせたところ、落語友達のMタンが、言った。

「え〜違う……。お半分様は横スライスでしょ。胴斬りの例もあるし。」
6/20  こんなことを真剣に考えている女を嫁にもらってくれる人が果たしているのだろうかと、恐ろしい考えを振りほどきながら描いてみました。迫り来る現実にくらべれば、どのお半分様もかわいいもんです。横スライスには、兄型と弟型があるし、縦スライスも左右対称だけで無く人体模型式カットもあり得えますね(そういうスライスを文楽のなんかの演目で見たことある。)正しきお半分様はどれかなぁ。などと、今日も妄想へ逃避を図る私。さびしいけれど、結構楽しい。

■4月は散る(2005.4月)

 前回の日記見直したら、3/29に「つくしんぼ落語会」にも行っていたことに気づいた私。振り返ってみれば、忙しいなりに頑張ってたんですね、でも続く4月は……。

 4/3 「八時間耐久講談会〜生きるか死ぬか〜」茶臼山舞台
    「源やんと町内の連中、小梅と一八の会 」高津の宮
 4/26「べにこご」salon de AmanTo
 4/29「文太の会」茶臼山舞台

 少ないなぁ。花見もできないほど忙しかったもんなぁ……。トホホホ。

■2月は逃げる3月は去る(2005.2〜3月)

 同僚のモク兵衛さん(仮)が、旦さん(仮)と衝突して会社を飛び出し、そのままおらんようになってしまいました。
 たちまち仕事が倍。アタシの休日と、行けなかった落語会を返せ!モク兵衛の アンケラソウ!キューカンチョウ!パイライフ!ワニ皮ヒョータン!徳川方!トラァディトール!アッサッシーノ!
 ……と、古今東西の罵詈雑言で煮えたぎる脳ミソをさましてくれた、2月と3月の美しき日々の記録。

 2/9 「まるまる出丸の会」東梅田教会
     2席目の出丸さん「天王寺詣り」途中から。

 2/22 「べにこご〜しゃべる紅雀×しゃべるこごろう vol.8」中崎町・天人
     遅刻寸前(スタッフなのに)

 2/27 「桂梅團治の梅満会」なんば・WH
     仕事後走ってギリギリセーフ(日曜なのに)

 3/5  「第3回雷ONハート」なんば・W小演芸場
     土曜日だもの

 3/6  「エリザベート」宝塚大劇場
     「ユーモア造形作家 江口 宏の目に効く言葉遊び展」京都MATIUS/8
     日曜だもの。

 3/11 「島之内寄席」なんば・WH
     三席目の染ニさんから。

 3/22 「べにこご〜しゃべる紅雀×しゃべるこごろう vol.9」中崎町・天人
     またまた遅刻寸前(スタッフなのに!)

 3/26 「ルネ・ラリック展」京都・美術館えき
     土曜だもの。

 3/27 「名探偵ナンコ」福島・本遇寺
     日曜だもの

 3/31 「桂都丸はなしの会」北浜・CHAKRA
     脱出に成功したので、一席目の前にワイン一杯の余裕あり。


 口入屋さんから新しいオナゴシさんがやってきたのですが、即戦力の経験者をお願いしていたのに、なぜか無経験の新卒さん。それがまた、事務所に籠りっきりのシモのおなごしさせるにはもったいないべっぴんさん。……誰かの陰謀を感じます。

宿屋ばばぁポスター  出丸さんの会で福笑師匠の「宿屋ばばぁ」を聞き、帰ってすぐに描き始めた。大映のポスターみたいにしたかったのだけど、なかなか思ったようには描けない。今後も研究しよう。

3/6  3/6の「エリザベート」はT先生におよばれ。いやーいつもありがとうございます。堪能いたしました。
 ざっくり物語を解説すると、トートという死神の元締めが、オーストリアの美貌の王妃エリザベートに魅ぃ入れてストーカーする話。その舞台たるや絢爛豪華!百花繚乱!軽妙洒脱!阿鼻叫喚!驚天動地!絶体絶命!いやーええですなぁ。
 ただ、私の落語ファンな脳の方が観劇の途中で、まったなんでここでいきなり歌う!とか、その取ってつけたようなラインダンスはなんや!とか、主人公の死神、黒とかグレーとかいつも同じような格好やのに、なんでそんなに衣裳替えすんの。意味ないやん!とか、末端の死神さんたちは枕元や足下で頑張ってるというのに。のんびりストーカーしててええのんか。とか、途中でゴジョゴジョつっこんできたのは確かではありますが、観終わった時、私の瞳には星がきらめき、脳内オーケストラが今聞き覚えたばかりの曲をエンドレスで奏で続ける有り様。一週間ほど続きましたかなぁ、そんな状態が。

 で、あの、話は変わるんですが、
 ミュージカルの曲って、一回聞いただけでも結構頭に入るんですよね。なのに、なぜ千朝さんの出囃子はいまだに覚えられないんでしょうか。「三下り鞨鼓」もちょっと危ない。実は「野崎」も。私の邦楽を認識する脳の分野はツルツルなのか? これって落語ファンとして……というより、日本人としてどうなんでしょうね。悩む……。
3/5  あと、珍しいところでは名古屋雷門の大阪の落語会へ行きました。

 雷門幸福さんが、扇子で床を叩く音の高さがひどく気になる。(傷つかへんかなぁ、床……)でも、大須で観たならなんとも感じないかも……。と、思わぬところで自分のセコさに気づき、恥じいってしまう。やっぱり人間、時間にゆとりがないと、心がささくれだつのですよ。ねえ、シャクセンダン、ええかげん露を降ろしてもらわんと、ナンエン草のこの身は持ちまへん。枯れる時は一緒なんだから、もうちょっとと大事にしてくださいよ。ねぇ。

■汝、初物食せし時は……(2005.2.6)

 2/5(土)の地盤珍華の会
 2/6(日)の文太さんの会

に行って来ました。この思い出は見聞録をご覧下さいませ。


 金曜、仕事中にお茶とお花の師匠から携帯に電話。師匠が親しくしている京都の料理屋さんがサクラが欲しいので、着物で来てくれたらごちそうしてくれるということ。詳しい事情はよく飲み込めませんが、めっちゃおいしいやーん。 着物の友達がいれば是非というので、M嬢を誘う。大和撫子に化けて八坂さんの前で待ち合わせて、イソイソと件のお店へ。

 なんでも同業者が食べにくるというのに、まったく予約が入っていなかったそうで、体裁が悪いので私らが呼ばれたらしいのだけれど、直前に駆け込み予約がたくさんあって、お店は賑わっていました。おいしいものが食べられたら、理由なんてどうでもいいの。機嫌よくやったりとったり。料理とお酒を楽しんでいると、タイラギ貝というのが出た時にM嬢が言った。

「これ、私多分初物。左向いて笑わなきゃ」

 え?初物食べたら単に寿命がのびるのと違うの? 笑わないとあかんの? それって義務なの?

「そう」

 ものは試し、とりあえずやってみました。着物の女二人さしむかいで、互い違いの方を向いて、ソプラノとアルトがユニゾンで

「アハハ、アハハ」



2/6 ……………なんか、これってすごく





楽しい。

 Mタンこのシキタリもらった! いつか結婚して子供ができたら、絶対家族みんなでやるんだ。

■予言? 2005.02.01.tue

   阪神大震災の特集番組や、NHK芸術劇場のギリシャ悲劇、それに以前に録画していた「日本の話芸」の「ねずみ穴」見たりしてから眠ったら、二つの頭を持ち肌の質感は和洋折衷、その大きさは大型犬くらいのイダカイケダカイ生き物が夢に現れまして、
「さやかよ、もうすぐ火事が来るから逃げるのじゃ」と言うのです。

2/1  荷物をバタバタとまとめて慌ただしく避難した後、かわいいパソコンちゃんたちを連れ出していないことに気づき、家へ戻ろうとしましたが、両親に取り押さえられ、私は燃え盛る炎に向かって、ただただ空しく絶叫するのみだったのであります。


 目覚めてすぐ、ずっと前に届いてそのままにしていた火災保険更新の払い込み用紙をカバンにねじこんだ私。ちなみに、用紙に記載されていた払込み期限まで、あと2日残すのみとなっていました。

 いざ火事になった時のことを思えば大した額ではないのでしょうが、サンケイの落語に5回行けて、「べにこご」やったら20回+ドリンク20杯分やと思うと、ついウジウジと先延ばしにしてしまってたんですよね。我が身の粗忽さを思えば、目先のお金を惜しんでいる場合じゃありません。昼休みにコンビニへ行き、レジのカウンターに諭吉先生2枚叩き付けてきましたとも。ええ。

 そういうわけで、2年後「こらぁ神獣! 払わんでもよかったやんけ!!」と笑って言えることを祈りつつ、自らに粗食・減酒を強いている、そんな私の1月の演芸納めはこの2連チャン。

 「名探偵ナンコ」
 この思い出は見聞録

 「べにこご〜しゃべる紅雀×しゃべるこごろう vol.8」
 この会の写真と、配付したリーフレット(秘かに自信作)は、公式HPべにこごwebの「紅雀のつれづれ集」に。アップしております。


 で、ふと思ったのですが、火事の落語って「華」と誇るだけあり、先述の「ねずみ穴」とか「富久」とか「味噌蔵」とか、お江戸が本場なような気がする。上方で思い付くのは「帯久」くらい?……あ、「延陽伯」にもチラっと出てきますか。それを言うなら「厩火事」も。なーんだ、結構あるやんか。しかも、実際には燃えてないのばっかりですよねぇ。めでたいめでたい。

■ハピハピホリデー♪ 05.01.15.sat〜16.sun

   1/15 土曜日。

 小雨の中を文楽劇場小ホールの「第四回桂こごろう独演会」へ。
 今日は他にも色々あり、とても長くなってしまうので、この会の思い出は、見聞録にアップしました。こちらの方をご覧下さい。よろしくお願いします。


 小ホールを出たのは、15時45分頃。ほわーっと頭から湯気を出しながらロビーを横切っていると、私を文楽に引っぱり込んだ張本人のT先生が、「2部のチケット余ってるねんけど、どぉ?」とおっしゃる。

 エッエッエ♪(←幇間笑い)。

 というわけで文楽再びです。(演目等は、この下の先週土曜の日記をご参照下さい)

 今週も祝祭ムード炸裂「七福神」。毘沙門天の「ハッスルハッスル」が増えていた。

 以下はさの字妄想劇場での人形遣さんたちの会話。
「(人形の手入れをしながら)あのー、毘沙門天の頭て、小川直也に似てはりません?」
「………明日、ハッスルさせとく?」


 大音量で吹き出す。三位一体なんだよ、右と左の人の息があわないとできないんだから、絶対アドリブじゃないよ。ズバリ「ハッスル」練習したでしょう! 文楽劇場の楽屋ってなんておもしろそうなんだ。

 引き続いての「伊賀越道中双六」が終り、頬の涙をぬぐっていると、T先生が、「ほな、ちょっといこか」とおっしゃる。え?どこへ?
「楽屋」

 エッエッエ♪(←幇間笑い)。

 そういえば、本格文楽デビューの平成十四年四月公演「菅原伝授…」の時も楽屋に連れてってもらったんだった。舞台草履の高さにたまげたり、もったいなくも大夫さん(あとで文字久大夫さんだったと知る)のご案内で奈落を覗かせていただいたりと、貴重な体験をさせていただいているにもかかわらず、ただただスゲースゲー!! と口をぽっかり開けてるばかりの「せがない子」で恥ずかしい限りだったのですが…………二年以上たってもやっぱり、口あんぐり開けたままでした。


 人の手を離れて楽屋に居並ぶ待機中の人形たちは、みんなどことなく恐い顔をしていました。コミカルな頭ですら、子供が見たら泣いてしまいそう。……うわーうわーうわー寿老人の伸縮する外法頭て、こうなってたんだ!

 などと、舐め回すように見ておりますと、人形遣の方がお一人すーーっと近寄ってこられて、笑顔で「よろしければ解説なぞ致しましょうか」とおっしゃった。

 エッエッエ♪(←幇間笑い)。

 素材やパーツ、お化粧や着付のことなど、くすぐりまで入れながらわかりやすく教えていただいた後、なんと!解説要員のお園人形を触らせていただいたんですが、思いのほか力がいる上、今人形がどんなポーズをしているか、まったくわからないんですよね。それでも、どうにかシナを作ってT先生にデジカメで撮ってもらいました。大事なお人形ですから急いで返そうとすると、
「今、すごくお間抜けなポーズになってましたので、もう一枚撮ってもらいましょうね」

と、さっさっさっとお園のポーズを整えてくださって、再撮影。お兄さんあなた、さっき写す時笑顔で見てはったやありませんか。……おもしろいお方じゃ。

 舞台に回って宝船の内部を覗き、誰が読むのか雑誌が置いてあるのをみつけたり、次の演目で使うセットの陰に、番頭の「駆け落ちセット」が用意されているのをみつけたりして、子供のようにはしゃぎ、いよいよ楽屋ツアーの終点、住大夫さんの楽屋へ。


 あぁ、あの時私は悟りました、たとえ普段しつけてなくても、人間すごい人に会うと自然に三つ指ついてお辞儀してしまうものなのだと。犬の服従のポーズじゃありませんが、本能でそうなっちゃうんだと。本当に自然に床に手をつかえてしまい、自分でもビックリしました。さっき「伊賀越……」で、泣かされたばっかりだから無理もないと言えば無理もないのですけどね。

 住大夫さんは全然気取ったところないおもしろい方で、字幕のことなどなど、歯切れよい口調で聞かせてくださり、夢のような時間をすごす。一言も聞き逃すまじと思いましたが、心臓がばこばこ、頭がぼーっ……知的なレポートができなくて、これをお読みの文楽ファンの方、本当にごめんなさい。

 記念にお写真をお願いしましたら、お風呂上がりなのでと、わざわざお髪に櫛を入れてくださった。梳きながら「もういくらもないねんけどな」というような意味のことを、(確かもっとおもしろい言い回しで)おっしゃって、思わずいつもの調子で笑ってしまいましたら、

「笑ろたらあかん。重要無形文化財やで」
1/15 重要無形文化財やでー、やでーやでーでーでーーーーー………(←リフレインしている)
 頬を紅潮させて、左右に揺れながら客席に戻りました。
 あぁ、今日も日記が長くなってすみません。でもでも聞いてほしかったんですもの。今でも耳に残るは師の「重要無形文化財やで」

…………………………………幸せ。



 1/16日曜日

 前日、帰り際に覗いた格安チケットショップで「荒川豊藏と加藤唐九郎」展のチケットをみつけた。お茶の先生から「とってもいいわよ」と言われておりましたが、その言葉に偽りなし!
 素人目にも心惹かれるものばかりだったのですが、中に加藤唐九郎氏絶作の茜志野の茶碗に釘付け。上手く言えないんですけど、90才近いご老人が作られた感じじゃなかったんです。印象が若々しいというか、華やかで生命力に溢れているというか。芸とか技って、年齢なんて軽く飛び越えるなぁ、エイジレスってこういうことかなぁ。

 ただ最終日は早仕舞だということをすっかり忘れていたので、ゆっくり見ることができなかった。警備員さんに急かれて会場を後にしたので心が残り、「なにかきれいなものをもっと見たい」というテンションになってしまいました。着物売場とか、茶道具売場を徘徊するも満たされぬ。博物館はどこも閉館時間だし、思い付いて松竹座へ行き、初春大歌舞伎二部の「廓文章」を一幕見してきました。

 初体験だったのですが、いいシステムですね幕見。番付と同じくらいの値段で楽しめてしまうなんて! 短時間なのも集中力が途切れず、かえって私向きかも。こんなに気軽に見られるなら、ちょくちょく行こう。

 長くなってしまって、すみません。そんなこんなで、とっても幸せな週末でございました。T先生、この度は本当にありがとうございます。

■1月三連休 05.01.07.tue〜10.mon

 えっと、まず後の喧嘩は先にしとかんならん。4日分なので、長いですよっ!
1/7  1/7(金) 第一回40歳で20年・桂出丸の会 トリイホール

 これが今年の走り初め。トリイに到着時刻は19:05

  出丸さん「天王寺詣り」
  わかばさん「掛け取り」インスタント麺と芝居。
  出丸さん「宿屋仇」

  世話九郎さまぁ、そいつらもう斬っちゃっていいですから。出丸さんの兵庫の若い衆は並み大抵のやかましさじゃないんですもん。同情の余地なし! 「宿屋仇」って勧善懲悪なハナシだったんだなぁ。と、サゲでいつにないカタルシスを味わう。


 後から聞いたところによると、冒頭の手品はファイアーショーだったそうです。見たかった……。




 次の日に着物を着る為、親の家へ戻ることになっており、知った顔がいても今夜だけは慎んでいようと思ったのに、ちょっと一杯のつもりで飲んで、いつの間にやら終電。結局自分の家に帰る。えぇい、酒好きに生まれた以上、行く末哀れは覚悟の上だぁ。
 暗い頃に家を出て、7時前に実家着。で、なんでそこまでして着物を着たいかっていうと、M嬢にお誘いいただいて文楽に行くからなんです。着物で連れもって歩けることはそうないし、彼女と一緒なら、帯がゆるんでも着崩れても、大・丈・夫! しかし嘘つき娘のために、布団をホットカーペットで温めてくれていたのを見ると、親の恩愛が身に滲みて申し訳なく、朝食の用意したり、コーヒーいれたりテキパキ働く。ごめんごめん、今日はちゃんと帰るから、ご馳走作って待っててね、ビールも冷やしておいてね。

 1/8(土) 初春文楽公演 第一部 開演11時

  「七福神宝の入舩」
  「伊賀越道中双六」沼津の段
  「恋娘昔八丈」城木屋の段・鈴ヶ森の段

 文楽劇場ステージ上部に字幕が登場し、床本が小型化。みんな一斉にページをめくるという、お馴染みのあの光景は、去年までで滅亡してしまったのですね。

 「七福神宝の入舩」は七福神のオールスター隠し芸大会&大新年会。大黒さんが打出の小槌を振り降ろすとお酒や盃が沸いて出る。それ、欲しい。布袋さんは出家の身なのでお酒は自粛し、戎さんはとりあえず一杯目ビール。小槌の一振りで飛び出したアサヒビールのジョッキを見て隣に座っていたおばちゃんたちが「エビスちゃうんや!」とバカ受けしていた。誰かが道具屋筋へ買いに走ったのやろうか。「すみません師匠っ、エビスのサンプルはありませんでしたぁ」って、頭下げている若い黒子さんを想像して、我慢できず大音量で吹き出す。晴れ着なのにぃ。

 「伊賀越道中双六」は住大夫・錦糸・玉男・簑助・文吾(ぽっ)と、豪華スターキャスト揃い踏み 。旅の途中に偶然知り合ったのは生き別れの実の父と妹、しかもその妹の思い人は、兄がいずれ討たねばならぬ男、人それぞれに葛藤が……と、韓国ドラマにもなさそうな設定。でもこういうの、好きなんだ。続く「恋娘昔八丈」は、先ほどまでたおやかなヒロインを演じていた簑助さんが、イタイ番頭を怪演。プリマも道化も完璧にこなしてしまうんだもん、すごいよなぁ……。

 晴れ着の方が多いし、紅白の餅玉で花盛りなロビーのしつらえ、舞台上部の巨大にらみ鯛に「酉」の額、中入に盛大な手拭まきもあって(今年はゲットできず!)すっかり元日気分。演目はもちろん、劇場丸ごとウキウキしていて本当に楽しかった!
 ……でも私、早起きし過ぎて、時々気を失ってしまいましたから。残念、切腹! (Mたん、ごめんなさいっ!)


 1/9(日)

 実家から戻り、引き蘢って終日読書。名探偵ナンコのレギュラーコメンテーター芦辺拓先生の新刊「切断都市」読了。前に読んだ「時の誘拐」は、最後までまったく真相がわからず、手玉にとられてしまったので、今度は注意深く前後を行きつ戻りつ読む。捜査に詰まったら現場に戻れっていうじゃない。でも、今回も翻弄されて、あっと驚くラスト。悔しいっ!! 舞台は大阪で、お馴染みの地名が名前を変えて出てくるので、ジモティにはおもしろさ+α。お薦めですよぉ。
 次に、米朝師匠と対談本を出したことでもお馴染み筒井康隆の「富豪刑事」。ドラマ化されるため、あちこちで平積みになっているのを見て、家捜しして再読。おバカで小洒落てて、何回読んでも好き。ヘタクソなドラマ化だったら、全国の筒井ファンが手に手に黄色い砂を握りしめて、テレビ局に乗り込んじゃうからぁ。第1回は13日、録画しなければ。

 1/10(月)高津宮 とんど祭

 ちかちゃんの綱渡りを見に行く。今年も境内にはおいしそうな食べ物屋さんがたっくさん! 後で一緒にご飯食べましょうって言っているのに、和風スジ煮込みカレーとか八海山とかホットワインとか飲みまくって食べまくる。(もちろん、あとでご飯もしっかり食べた。)

 ちかちゃんは風が強いのに、傘だの水の入ったコップだの各種バランス芸を決めてしまう。そんなにいろいろ乗せて回しちゃって、君のアゴや額はどうなってるんですか。和傘の上でマリを回す新技もバッチリ見られて満足。綱渡りだけじゃなく、いろいろ練習しなきゃいけないので、忙しくて落語会通いもままならないね……、頑張れちかちゃん! 代わりに私、あなたの分も笑ってきてあげるからねっ。とりあえず次は、土曜日のこごろうさんの会に行ってきます! 笑うぞ〜。

■「赤壁周庵」と「幾代太夫」の会(高津の富亭) 05.01.04.tue

 文太さんの会は開演前に前説があるので、早めに行かなきゃ。でも、なぜかいつも間に合わない。千日前線の本数が少ないのが……いや、確かにそれもあるけど、トロい私自身が悪い。今日の場合、お昼ご飯が食べたりなくて、お雑煮のお餅を後からもう一つ焼いたり、具を足したりしなければ余裕だったはず。前の夜には、早めに出て高津さんと高倉稲荷さんに詣でましょうと思って、着ていく服にハンカチ鼻紙枕元にそろえて寝た。でも実際には落語が始まる直前、手水もせずに会場に飛び込んだ。こんなハズじゃなかったんだけどなぁ。

1/4   文太さん「代脈」
   〃  「幾代餅」
  染左さん「しびんの花活」
  文太さん「寝床」


 さて、本日のゲストは先月のお兄さんに続いて、この会の高座に登場した染左さん。「しびんの花活」。お武家さんがしびんを買って帰るところを、「んー、現代でいうと、スーツでビシっと決めたヤンエグ(死語?)が、しびんを抱えているのに相当するのか」なんて、上品なお兄ちゃんがアルマーニのスーツにレイバンのサングラスかけて、緑色で半透明の男性用しびんを大事そうに抱えて帰る姿を頭の中に描いて、ゲラゲラ笑う。でも、あのシーンはきっとそういうことなのでしょう。うむうむ。

 どれも堪能したけれど、なんといっても「幾代餅」! めっちゃくちゃいい噺やなぁ「幾代餅」…….子供のころから大好きなんだぁ。「幾代餅」ええなぁええなぁ「幾代餅」……。

 今日のこの会の、いつにも増す気持ちのよさって!? 幾代太夫が初会の翌朝に煙管を差し出す場面を、「ここ、ええとこでっしゃろ!」といって、何回もやってくれちゃったり、寝床の旦さんの会では、金魚・猫・犬から鼠まで逃げ出してしまうエスカレートぶりで、好き放題やり放題のオチャメさは今年も健在だし、風雅というと、とりすました感もあるけれど、気安い雰囲気の中で爆笑しながら、感謝と敬意に思わず姿勢を正してしまう……、こざっぱりと清潔で品があって、それでいておもしろい。私の貧困なボキャブラリーの中で、一番近い言葉が「風雅」。(文章に書いてみると、全然違うような気も……。ニホンゴムツカシイヨ)
 

 さて、昨年までのアルファベット順に進行していた「Amazing Bunta Club」は、京都コンサートホールにクラシック界の笑福亭福笑ことワレリー・ゲルギエフ(私がそう思っているだけなんで、人には言わないように)指揮のマーラー9番を聴きに行ってしまったのを除いて、ほぼ出席。(多分、それだけだったと思うけど……) 新シリーズこそ皆勤! ………でもお正月連続興行は4日と5日。明日って会社始まってるよ!! あまりに早すぎる挫折に涙しながら牛ハラミラーメンを食べて谷九から梅田へ。セール中のワゴンの中にとてもかわいい服をみつける。デザインと価格の両面から、しばし検討しようと、タワーレコードへ。michi Kさんが太鼓を叩いている「ショスタコ7番レニングラード」のCDと、オペラ「トゥーランドット」のDVDを見つけてしまって、購入即決。このDVDに主演のフランコ・コレッリってテノール、一昨年亡くなった方なのですが、私是非是非来世は大阪に生まれて落語家になってほしいっ!! って、思ってるんです。なんでかっていうと……と、長くなってしまったので、その話はまた今度。

 あ、服の購入は取り止めました。だってお金なくなってしまいましたし、私、やっぱピンクの花柄似合いませんから〜。残念!

■サンガニチ

 2005年は、少しはマメになりたいなぁ……と、黒豆を食べまくったさの字です。どうぞご利益がありますように。

 ひとり食べる年越しソバの具はカマボコと天カス。ケチらずに海老天を買っておけばよかったと後悔しながら2004年が終わり、カラスカーで2005年。

 元日は、朝は電車の窓から白く薄化粧した六甲を眺めながら実家へ帰り、着付、初釜、楽しいおしゃべり、テレビでニューイヤーコンサート。サエザエとした大きな大きな月を、電車の中から見ながら帰り、日本の話芸を見ながら眠る。一年の計が元旦にあるというならば、私は今年もまた落語と音楽を愛でながら、食いしん坊に暮らすことでしょう。

 私が元日に口に入れたもの。

  人参を買い忘れて彩りの貧しいお雑煮。お餅は1つ
  初釜の懐石
  先生のお宅のお重、たらふく。
  お汁、2種類。
  お寿司
  花びら餅
  お干菓子
  福茶
  濃茶
  薄茶
  番茶
  緑茶
  冷酒
  ビール
  ケーキ

 こんだけ食べておいて、家に帰る途中でラーメンを食べてしまいました。元日からお店が開いているのが悪いんだ……。

 年末に胃を壊してずっと食べられなかったのに、調子よくなったからって一気にこんなことをしたものだから、蛇含草があったら、迷わず飲んでしまいそうな苦しみを味わう。あぁ、どうぞどうぞよい一年でありますように。
 2日。胃が痛いので餅なしのお雑煮を食べてサンケイホールの米朝一門会へ。2004年演芸始めだぁ。
 サンケイホールは人が多くて大変! コーヒーを買って席へ戻ろうとするのだけれど、危なくてなかなか進めない。でも、この押し合いへし合いも、この夏までだと思うと感慨が深いような気も。ザワザワしているというのに、CD販売コーナーからの雀々さんの声はよく通って響き渡る。貧乏なので、着物姿でにこやかにサインしている姿をこっそり覗き見る。あぁ、近くで見てもかわいいー好きー。また明日ねぇ♪
1/2  さて、米朝師匠以外は特にお正月らしいネタということもなかったこの日の演目。

  よね吉さん「ちりとてちん」
  文我さん「子ほめ」
  米二さん「時うどん」
  南光師匠「胴切り」
  米朝師匠「正月丁稚」
   中入
  朝太郎さん「あやしい手品」
  ざこば師匠「天災」
  小米朝さん「親子茶屋」


 お正月からブッタ切りの南光師匠。この主人公は特異体質なので、傷口がツルツルになって塞がちゃったそうなんですが、年末に「ハンニバル」を見たので、内臓ドバチャーな映像が頭に広がってしまう。ギャー。
 ざこば師匠は鼻血が派手な「天災」。主人公の乱暴ぶりが、また尋常じゃない。

 きゃー痛ーい!痛ーい!!と、もだえていたクセに特におもしろかったのは流血系のこの二つ。心と体はウラハラか……。

 笑うと胃痛が消えたので、普通に飲み食いしてカラオケにも行って帰る。早く寝るつもりが、玉三郎さんが出ていた番組がおもしろくて朝まで見てしまい、早寝早起きの誓い、新年二日目にして破れる。あっけなさすぎです。あぁ……。

 3日。ちかちゃんと正午に待ち合わせて天人さんへ。べにこごの置きチラシして、(次は1/24月曜日ですよっ!)ランチして、オーナーに新年のご挨拶。なんとお正月モードで、15、6人は入れそうな、すっごく縦長のコタツ出現!(天人さんはカフェです……)最近のコタツって中、赤くないよねなどと盛り上がり、オーナーから厳寒の北海道で熱気球に乗ってきた話などを聞く。この人は、私は一生せずに死ぬのだろう……というような珍しい武勇伝をたくさん持っている。でも、今日もまたサンケイなので、名残惜しく出発。余裕を持って出たはずが、道を間違えて思わぬタイムロス。今年もまた、方向音痴なのか、私。

  紅雀さん「いらち俥」
  雀々さん「動物園」
  千朝さん「掛け取り」
  ざこば師匠「ざっこばらん」
  米朝師匠「正月丁稚」
   中入
  米八さん「曲独楽」
  南光師匠「べかこ」
  雀三郎さん「親子酒」

 おっ、書いてみて気づいた。二日間ともトリが「親子」だ。
 「ざっこばらん」はさこば師匠の日々の闘争を哀感をこめたウダウダ。南光師匠が そそのかさ 薦めなければ、ざこば師匠は今日「首提灯」か「米揚げ笊」をされるつもりだったそうです。前日の天災が超よかったので、「今日はなんのネタ聴かせてくれるの♪」と期待を膨らませるだけ膨らませていた私は、少しばかり残念。しかし今年は引き続き「ざこばブーム」到来中。小さい会場で聴きたいなぁーと、今年の目標を一つ増やす。

 米朝師匠が前日と同じネタだったせいか、中入で「一門会だと、いつも一人くらいはレアなネタがあるんだけどな。なんだか今日は変わった噺聴きたい気がする」などと話す。だって一日目がネタだったし、二日目は絶対古いレアな「小噺集」だと思っていたんですもの。 すると、聞こえたかな南光師「べかこ」! 満足満足満足!

 引き続いて夜の南湖さんの会にも行きたかったのだけど、「三が日に顔を見せないなんて!」 と両親がゴネたので、しぶしぶ帰る。自分らだって出かけていたのに勝手なものです。不機嫌ながらも、行ったら行ったで、おいしいものもいっぱい出てくるし楽しい。また食べ過ぎて、泣きながら胃薬を飲む。あぁ、私の学習能力って……。

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